阿蘇輪地切り研修に絡めたふらり旅[7日目]風穴を見た後、大船山に登ったらとんでもないことに…
昨日はたっぷりと身体を休めたので、今日は山に入って、入山公墓所あたりまででも歩いて見よう。ただ、天候が気になるし、登山ルートも曖昧なままだ。どこに車を停めて、どう登れば良いかも、明確にはできていない。とりあえず、今水登山口に行ってみるか…。そして、その後は臨機応変に。それがふらり旅のやり方だ!と、出掛ける前まで、そんな、軽い気持ちでいたのだった。
2021年9月3日(金)の行動履歴
大分県、阿蘇市 <徒歩移動> 9.0 km 9時間38分 <車移動> 17.8 km 47分 道の駅 ながゆ温泉 9:25 ↓ 車- 10.7 km 22 分 ぐるっとくじゅう周遊道路/県道30号 経由 今水登山口駐車場 9:47~10:00 ↓ 徒歩- 850 m 42 分 大きなキノコ発見 10:42~10:50 ↓ 徒歩- 1.8 km 1 時間 15 分 黒岳・風穴/大船山 分岐 13:04~13:06 ↓ 徒歩- 140 m 14 分 風穴 13:20~13:34 ↓ 徒歩- 650 1 時間 12 分 ロープ 14:46~14:52 ↓ 徒歩- 550 m 43 分 今回の到達点 15:35~15:42 ↓ 徒歩- 400 m 26 分 ロープ 16:08~16:10 ↓ 徒歩- 350 m 40 分 帰りに休憩 16:50~17:00 ↓ 徒歩- 4.0 km 3 時間 39 分 今水登山口駐車場 20:39~20:45 ↓ 車- 250 m 2 分 今水炭酸泉 20:47~20:55 ↓ 車- 6.8 km 23 分 奥豊後グリーンロード 経由 道の駅 ながゆ温泉 21:18
道の駅 ながゆ温泉
朝、6時30分。いつもよりも早めの目覚だ。着替えて、120㍍をぼちぼち歩く…。
ここの道の駅は、メインの駐車場卯から公衆トイレまでは、約120㍍離れている。トイレの前にも駐車スペースはあるが、普通車用の区画のみで駐めにくいし、出入りが多くて落ち着かないので、利用しない。
バスの始発便は7時03分。それまで、まだ、20分ほどある。道の駅内も、街もまだひっそりしている。
雨は降っていないが、どんよりとした雲が立ちこめている。今日も、すっきりとした晴れ…とはならないようだ。
トレーラーに戻って、ベッドをテーブルに変えた。そして、ネット検索で登山ルートの情報を集めようとしたが、今ひとつ、よく分からない。行ってみるしかないようだ…。
ナップサックにくじゅう一番水を詰めたペットボトルを2本入れる。そして、ロールパンと折り畳み傘を入れた。それに山登りの時には杖代わりにもなる三脚。もちろん靴は、登山靴に履き替えて、パンツも歩きやすくて撥水性のある薄手のものを履いた。これで何とかなるだろう…。
食事は、助六寿司とヨーグルトで済ませた。
さあ、天候に不安があるが、行動あるのみ!行くしかない!
トレーラーを切り離し、9時25分に、ヘッド車だけで出発した。
↓ 車- 10.7 km 22 分 ぐるっとくじゅう周遊道路/県道30号 経由
今水登山口駐車場
に着いたのは、9時47分。縦列駐車ができる程度に路肩が広くなっている。ここには、たぶん5~6台ぐらいは駐められそう。ここより100㍍ほど下にも路肩の広い場所があり、数台は駐められそうだ。
今日は私の車以外には駐まっていない。誰も登っていないのだろうか…。
ここから左に登っていくと、「風穴」とある。こちらが進行方向だ。逆の右に下れば「七里田温泉」へ行くと書いてある。10時00分、車を降りて、ナップサックを背負い、三脚とカメラを手に取った。
これより先は、管理道路となり、駐車禁止。もし駐めていたらレッカー移動し、料金も請求されるそうだ。
もちろん、ここからは歩いたのだが、すぐに未舗装道路になり、自然歩道のような道になった。とても、車が走れるような道ではない。
↓ 徒歩 – 850 m 42 分
大きなキノコを発見
したのは、ここ。10時42分。キノコを観察しながら、序でに8分ほど休憩した。
タマゴタケなら、食用でしかも美味しいそうだ。しかし、毒キノコのタマゴタケモドキやベニテングタケなどにも似ているため、要注意。見分け方を身に付けられれば、山の幸として味わうことができる。
さあ歩こう。10時50分に出発。
雨が降りだしたので、傘を差して、岩陰で30分ほど待機した。
↓ 徒歩- 1.8 km 1 時間 15 分
黒岳・風穴/大船山 分岐
に到着したのは、13時05分頃。風穴がこんなに山奥にあるとは想定していなかった。
苔生した岩をゆっくりとよじ登るカエルを発見!
ニホンヒキガエルという種だと判明。似たものにアズマヒキガエルというのがあるが、その見分け方は、このサイトの記事がわかりやすかった。
↓ 徒歩- 750 m 1 時間 40 分
風穴
にたどり着いたのは、13時20分。遠かったぁ~~。こんなに山奥とは正直、想定していなかった。
解説によると、大船山風穴は、岳麓寺在住の木下羊三氏が明治37年7月27日に発見。蚕種を自然孵化させないで保存する天然の冷蔵庫として活用を開始。大正3年には株式会社大船山風穴を創立して、全九州と中国・四国から貯蔵依頼を受け、日本の隆盛に貢献。しかし、大正末期に人工製氷が開発されると一気に衰退。現在に至っている、とある。
四角い入口には、鉄棒にロープが1本、外から2本吊されている。中には照明がなく、薄暗い。解説版の記述によると、2部屋あるようだが、目が暗さに慣れてくれず、よく見えなかった。
岩は今朝からの雨で濡れており、とても滑りやすい(ハズだ…)。それに、この鉄棒やロープは私の体重を絶対に支えてくれるという保証はない。
そもそも、暗所恐怖症ではないものの、高所恐怖症と閉所恐怖症の私にとって、この穴から中に入るのは、至難の業だった。しばらく、心を落ち着かせて、チャレンジする気持ちが湧いてくるのを待ったのだが、とうとう、最後まで決心が付くことはなかった。
ヘルメットもヘッドランプも持ってきていないし、手袋もはめていない。それに、服が汚れても困るしな、と今回、踏み込まなかった理由をたくさん集めて、勇気がなかった自分を正当化した。
13時34分になった。さあ、戻ろう…。
登ってきた道を、下っていく。そして、大船山への分岐点まで降りてきた。
ここで、何を血迷ったか…、ふと、米窪をまわって大船山に行くルートで帰ろうと思ってしまったのだ。この軽い決断が、後々とんでもない事態を引き起こすことになる…。
後日、この赤い実を付ける木の名前を調べるのに往生した。最初はガマズミと思っていたが、どうもしっくりこなかった。ガマズミだと黒い実は付かないはず…。その辺に拘って調べたらオオカメノキ(大亀の木)に辿り着いた。これはたぶん間違いない…。
↓ 徒歩- 650 m 1 時間 12 分
ロープ
が張ってあった。滑りやすい急坂だ。14時47分。慎重に登る…。
それにしても不思議だ。赤いもみじの葉が落ちている。今は晩夏なので、今年の葉はまだ紅葉していないはず…。だとすると、この落ち葉は去年の葉が、落ちたまま分解されずに残っているというのか? 天然クーラーの効果だろうか…。風穴と一緒?
↓ 徒歩- 550 m 43 分
今回の到達点
米窪が見えるところまで上がったのは、15時35分だった。
雲に覆われていて視界が悪いのだが、米窪の周りを歩いて、大船山に向かうのは、無謀!到着が何時になるかもわからない。
「先に進むのをやめて、急いで元の道を下山しよう。勇気ある撤退だ!」
しかし、冷静によく考えたら、ここから、来た道を戻るのも、とんでもないことになりそうだ。下りとは言え、途中は赤いテープだけを頼りに歩いたところも多かったではないか!暗くなって道がわからなくなったらどうすれば良いのか?
ここに来て、ようやく、自分がとんでもない状況の追い込まれていることに気が付いた。
下山開始は、15時42分。デジタルカメラは予備のバッテリーまで使い果たした。これからはスマホでしか撮影できない。
↓ 徒歩- 400 m 26 分
ロープ
が張ってあったところに戻ったのは、16時08分頃。
果たして本当に無事に下山できるだろうか…。不安がよぎる…。
「昨日のチャーシュー5枚入りとんこつラーメンは絶品だった。今日は、カレーライスか味噌とんこつを食べよう!ああそうか、18時までに入店すれば、生ビールが300円で飲めるんだった。楽しみ~~」
希望を失わないために、そんなことを思い浮かべながら、山を下った。
↓ 徒歩- 350 m 40 分
帰りに休憩
した場所は、下のGoogleマップ航空写真でいえば赤い矢印のところ。16時50分だった。
10分間だけ休憩して。17時00分に下山開始。
「タイムリミットまでは、あと1時間かぁ。とても間に合いそうもない。」
タイムリミットとは、隼ラーメンの生ビールタイムサービスの時間だ。残念ながら生ビール300円は、諦めざるを得ない。
「いいじゃないか。定価で飲んでも…。それにしても腹も減ってきたなぁ…。ロールパンだけじゃ腹持ちが悪い。」
ただでさえ曇っていて薄暗いのに、18時近くになってくると、ますます光量が減って、風景がモノトーン化していく。それに伴って、唯一のよりどころだった赤テープが見つけにくくなっていった。
それでも、見つけては先に進み、その先で更に探す…。それを繰り返すしかなかった。
段々と周囲は暗くなっていく…。その度に赤テープは見づらくなっていき、それとともに心臓の鼓動が速くなった。
「一体どうなるのだろう…」
ときどき、大声を出しながら、不安感をかき消した。
しかし、次の瞬間驚いた。結構歩いたはずなのに…、見たことのある風景…。前セリ分岐だ。
ということは、20分ぐらい歩き回ったのに、元の場所に戻っていたことになる。いよいよ、頭の中に時々よぎっていた「遭難」の文字が現実化してきた。驚きと恐怖が相まって、上の写真は手ぶれしてしまっている。
でも、本当の恐怖…、本番はこれからだった。目をこらして道を探して、下っていったのだが、しばらくすると、とうとう日が暮れて、何も見えなくなった。真っ暗闇になったのだ。
この時点では、独り言を大声に出して、喋っていた。周囲に人の気配は全くなかった。もし、聞かれていても恥ずかしいとは思わかっただろう。いや、誰かに出会ったら大喜びしたに違いない。
一方、獣が周囲にいるという気配も感じなかった。しかし、確信は持てない。潜んでいないとは限らないのだ。だから、大声を出して、人間アピールをするという目的もあった。
なんで、熊鈴を持ってきていないのか!今ごろになって悔やんだ。
さて、残された光源はただ一つ。スマホの懐中電灯アプリだけだ。
さっそく、アプリを開いたのだが、スマホで照らされた4~5㍍先の様子までしか掴めない。道かどうか、いや、川の跡?そんな違いはまったくわからない。道に見えても登山道なのか、獣道なのか…。わかるはずがなかった。
「谷川沿いにむやみやたらに下ると返って遭難する」という話を聞いたことがある。こんな時は、明るくなるまで安全な場所でビバークするのがいいのかもしれない…。いやそれより、警察に電話をして救助を要請する他ないのでは…。いろんなことが頭をよぎる…。
ビバークするとしても、国立公園内では、火は使えないだろう…。ならば、夜は獣が居るだろうから、落ち着いて休むことはできない…。だからといって、警察に連絡したら、救助隊が組織されて、多くの人に途轍もない迷惑をかけてしまうだろう…。それに、夜間は二次被害を避けるために明朝まで動かない可能性が高い…。ならば、結局、一緒ではないか!
今の状況が、昔と違うのは、GPS機能つきの地図を閲覧できる文明の利器、スマホが手元にあることだ。これを操作することにより、Googleマップで現在位置を表示させることができる。そして、今、どっちの方向に向いているかもわかる。
時々、向きと位置を確認しながら、スマホの灯りで進んだ。もし、電池切れになったら、そのときは万事休すだ。そうなることだけが最高に恐ろしかった。
途中、谷川跡のような2㍍ほど岩場を降りなければならない場所があった。進行方向はこっちとなっているのだが、果たしてこれは正解なのか…。確証はない。降りるべきか、避けるべきか…。
一旦、降りてみたが、更にその先にもっと激しい崖のようなところがあった。やはり違っているようだ。少し戻って、今度は右に逸れてみると、その水の無い川沿いの右手に道らしきものがあった。こっちが正解か…。
しかし、登山道らしき道は、しばらくするとまたわからなくなった。赤テープが見えないので、道かどうかの判断すらできない。
そうやって、試行錯誤しながら樹林の中を進んでいると、有刺鉄線があった。
そういえば、行き掛けには、道沿いに有刺鉄線の柵が、しばらく続いており、その先で一箇所だけ開いて、通路になっていたことを思い出した。
なぜ、行き掛けにこの出入口を地点登録しておかなかったのか…。今更悔やんでも後の祭りだ。
今、出くわしている有刺鉄線は、左右のどちらに行けば、出入口の切れ目があるのか…。スマホのGPSによると、進むべき方向は、この有刺鉄線の向こうを示しているのだが、そもそも、この有刺鉄線のこちら側と向こう側のどちらが本当の登山道のある側なのだろうか?それすらわからなくなっていた。ここまでも、道なき道を歩いてきていたからだ…。
それでも、GPSが向こうに進めというのなら、一か八かこの柵を超えるしかないだろう。有刺鉄線の枠が広がっているところを探しだし、そこをくぐって向こう側に移った。
太ももの辺りに針が少し刺さったりもしたが、無事に向こう側にくぐり抜けることができた。そして、それは正解だったようだ。道らしきものが現れた。
結局、スマホの電池は切れることなく、灯りを灯し続け、私を今水登山口まで誘導してくれた。
今となっては、奇跡が起こった!と言うほかない。全能の神様が導いてくださったのだ。今水駐車場の車を見たときには、感動を覚えたし、感謝の気持ちでいっぱいになった。それとともに、今後、山に入るときには、決して今回の奇跡に甘えることなく、十分な水と食料、ヘッドランプ、それにスマホ用のモバイルバッテリーも必ず持っていくこと。それと、登山中は常に場所と時間を確認して、暗くなる前に無理なく下山できるように細心の注意を払おうと決心した。
これが、ふらり旅の原則だ、なんて、山に入るときには思わないこと!これを徹底的に脳裏に刻み込んだ。
↓ 徒歩- 4.0 km 3 時間 39 分
今水登山口駐車場
に駐めていたクルマに乗り込んだのは、20時39分。運転席に座った途端、緊張感が一気にほぐれ、疲労感がどっと出た。車のパワースイッチは押したものの、すぐには発進させず、このままこの場所で気持ちを落ち着かせた。
思い返すと、無事に下山できたことは奇跡だが、そもそも、朝、ここに車を停めてから、風穴、そして米窪まで登って、下山するまで、他の登山者と一切出会わなかったのはいったい何故だろう。本当に不思議なことだ。季節の問題か、それとも天候の問題か、はたまたルートの問題か…。
とにかく、この道は素人が軽い気持ちで登る道では無いということをようやく悟った。
「この時間だと、ラーメン隼の閉店時間にはとても間に合わないなぁ…。生ビールをグッと飲んで、カレーライスを食べたかったなぁ。でも仕方ない。今度行くときまでお預けだ。」
これぐらいのペナルティは甘んじて受けるしかない。自分で蒔いた種だ。自分で刈り取るのだ。20時45分、ようやくアクセルを踏み、車を発進させた。
↓ 車- 250 m 2 分
どうせ間に合わないのなら、間に合わない序でに
今水炭酸泉
の場所を確かめて帰ろう。ということで、20時47分に、Googleマップ上のその場所にある駐車スペースに車を停めた。
だが、その辺をうろうろしても、一向に今水炭酸泉への降り口は見つからなかった。だいたい、暗くてよく見えないのだ。
「やはり、夜ではダメか…。折角ここまで無事だったのに、ここで無理して、谷川に転落でもしたら目も当てられない。今日の反省点をきちんと踏まえて、明日、明るいときに出直すことにしよう。」
そう自分に言い聞かせて、20時55分に、ここを出た。
↓ 車- 6.8 km 23 分 奥豊後グリーンロード 経由
道の駅 ながゆ温泉
に戻ったのは、21時18分。こんなに遅くなるとは、思いもよらなかった。
かなり危険な目に遭ったが、すごく有意義な良い経験をした。 再度、神様への感謝を捧げて、今後の登山の際の教訓とした。
テーブルをベッドに戻し、パソコンは開かずに、床についた。すぐに寝落ちしたのは言うまでもない…。