樹氷が見たい![2日目①]牧ノ戸峠の周辺を散策する
牧ノ戸峠周辺散策
日の出時刻の7時6分はとっくに過ぎていたのだが、太陽は空一面に広がっている雲の遮られ、顔を出していなかった。若干でも背景に青空があったら樹氷も映えるのだろうにと、雲の切れ間ができるのを期待していたが、自然はこちらの都合通りにはなってくれないものだ。
そもそも、樹氷を拝見できるかさえ、この時点ではわからない。
トレーラーを出て、周辺を散策することにした。果たして、近場に美しい樹氷スポットはあるのだろうか。
トレーラーを駐めていた場所は、牧ノ戸駐車場の一番奥。この時点では、駐車スペースにもまだゆとりがあった。(7時半頃)
しかし、1台、また1台と、次から次にクルマが入ってきて、レストハウスに近いところから順に駐車場が詰まっていく。
「わざわざ、こんな寒い日に、しかも朝早く到着できるよう、夜中のうちから起き出して、集まってくるなんて…」という思いが一瞬、脳裏をかすめるが、それは私自身が、これらの人々を突き動かしている冬の久住の魅力にまだ気付いていないだけなのだろう。
到着したクルマからは、次々に冬山登山に相応しい服装に身を包んだ人々が降りてきて、装備の最終点検をしたり、仲間同士で打ち合わせなどをしている。
大学生サークルの団体だろう。ホッケー用のスティックを持っている。その人たちの横を通ったとき、会話の一部が耳に入った。先輩が後輩にこれまでの経験を語っているようだった。
「装備を担いで、雪道を上っていくのは確かにきつい。しかし、御池で滑ったら、感動して疲れも吹っ飛ぶ。行けば分かるよ。やみつきになる…」
そうなんだろう。何となくわかる。昨晩、塚田温泉センターで出会った福岡から天ヶ瀬に移住した方も、毎年、冬の久住に登って写真を撮っておられる。冬の久住が、それだけ人を魅了する場所だということだ。
私の軽登山靴では、雪道は少し滑って歩きにくかったが、沓掛山までのほぼ中間にある展望台の東屋までと決めて、写真を撮りながら、滑らないようゆっくりと登った。そこまでは登山道が林の中を通っている。果たして枝に氷はついているか…
残念ながら木々の枝には「樹氷」ではなく、雪が積もっているだけだった。しかし、それでも九州では、珍しい光景だし、それなりに美しい。
登山道は展望台の直前で林を抜け、視界が開ける。その東屋周辺をうろうろしながら、しばらくたたずんだ。少し待てば、雲の切れ間に青空が顔を出すかもしれない。
東屋から下を除くと牧ノ戸峠のレストハウスや駐車場一帯を一望できるが、この日は雲の流れによってかすんだりひらけたりを周期的に繰り返していた。
それにしても輝く太陽と背景の青空がないと雪景色はまったく映えない。まるで古びたモノクロ写真のようだ。
しばらく待ったが、結局青空は拝めなかった。
仕方ないので下山することにした。下山の方が滑りやすい。より一層、慎重に歩いた。
牧ノ戸峠レストハウスまで降りたら、今度は黒岩山への登山道を250mほど入ったところにある牧ノ戸展望台に行ってみた。こちらの登山道は低木が多く開けている。ときどきちょっとだけ雲の切れ間から青空が見えた。
散策を終えてトレーラーに戻ったのは10時頃。すでに駐車場はクルマでいっぱいだった。これだけ多くの人が冬の久住の魅力にとりつかれているのだ。
この時間だと、この付近の道路には凍結している区間が残っているかもしれないし、そもそもクルマがいっぱいで、トレーラーを繋いだままでは出られない。出るためには、ヘッド車をトレーラーから一旦切り離し、向きを変えて、付け直さなければならない。
朝食も採っていなかったし、急ぎの旅でも無い。しばらくトレーラーで休憩することにした。
そもそも樹氷のできる条件とは
お天気.comによると
「樹氷は気温が氷点下5℃以下の時に、樹木などに吹き付けられてできた白色不透明の氷です。(中略)樹氷が成長する条件は、氷点下の厳しい冷え込みが続き、毎秒10mを超す強い西風が吹いているときに大きく成長します。」
とある。
つまり、雪が降れば樹氷ができるというわけではなく、圧倒的に冷たい水(過冷却水、-5℃の雨粒や雲粒)を大量に含んだ風が、その水を受け止めやすい常緑樹の葉や枝に吹き付けられ、氷結しなければできないというのだ。
ということは、もっと気温が低い沓掛山やもっと先の御池周辺まで登っていたら観られたかもしれない。安易に考えていた自分が恥ずかしい…。ドンマイ!